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社会不安障害
社会不安障害
社会不安障害とは
例えば結婚式のスピーチを頼まれて、「ちょっと恥ずかしいな」と思うのは誰にでもあることですが、スピーチを頼まれた時から失敗して他人から馬鹿にされはしないかと考えプレッシャーを感じて苦しい日々を過ごしたり、マイクの前に立ったもののふるえが止まらず、声もうわずり、スピーチを続けられなくなってしまう。その結果、「人前で話しをすることによって、悪い評価をされるのではないか・・・」「周囲から注目を浴びて、恥ずかしい思いをしてしまうのではないか・・・」といった、他人に悪い評価を受けることや、人目を浴びる行動への不安により強い苦痛を感じたり、身体症状が現れ、次第にそうした場面を避けるようになり、日常生活に支障をきたすことを、社会不安障害といいます。
この社会不安障害は性格だけの問題ではなく、精神療法や薬物療法によって症状が改善することがある心の病です。ちょっと恥ずかしいと思う場面でも、多くの人は徐々に慣れてきて平常心で振る舞えるようになりますが、社会不安障害の人は、恥ずかしいと感じる場面では常に羞恥心や笑い者にされるのではという不安感を覚え、そうした場面に遭遇することへの恐怖心を抱えています。人前に出ることを恐れるようになると、うつ病などの引き金となることもあります。
社会不安障害の人が苦手な状況
- 権威ある人と面談する
- 人前での行為や会話
- 知らない人との会話
- 会議で意見を言う
- 誰かを誘おうとする
- パーティーを主催する
社会不安障害の症状
強い不安が自律神経に作用し、さまざまな身体症状を発症することがあります。以下のような症状をみとめることがあります。
- 顔が赤くほてる、汗をかく、口が渇く
- 脈が速くなり、息苦しくなる
- 手足、全身、声の震える
- 吐き気、めまいがする
- 尿が近くなる、下痢になる
- パニック発作を認める
社会不安障害の治療法
社会不安障害の治療法は、薬物療法と精神療法の2本柱で、大抵において2つの治療法を併用して行われます。どちらの治療法も医師と相談の上、患者さん自身が納得して積極的に治療に参加することが大切です。
●薬物療法
薬物治療によって、不安や緊張を抑え、苦手としている場面を避ける「回避行動」を減らし、日常の緊張や不安の緩和を図ります。使用する薬剤はパニック障害と同様に、抗うつ薬(SSRI)と抗不安薬が中心となっていきます。抗不安薬は長期の使用や乱用によっては依存傾向を認めるため、SSRIの効果が現れるまでの期間使用することが多くなります。また強い不安や緊張を伴う場面(会議で発言したり、プレゼンで発表するなど)の前に屯服で使用することもあります。SSRIは、抗うつ作用と抗不安作用をもつため、薬物療法の中心となっていきます。
社会不安障害の原因は、今のところはっきりとはしていませんが、神経伝達物質であるセロトニンの放出バランスが崩れていることが原因の一つではないかと考えられています。SSRIは、一旦放出されたセロトニンが、もとの神経細胞に再取り込みされることを防ぐことで、神経細胞間の遊離セロトニン量のバランスを保つ薬剤です。
●精神療法
社会不安障害で行う精神療法には、一般的に「認知行動療法」「暴露療法」「森田療法」などがあります。しかし、患者さんひとりひとりにはそれぞれの事情があるため(精神状態、社会状況、回復状況など)、ひとつの治療法に固執するのでなく、状況に応じてそれぞれの治療法を組み合わせながら対応していくことが一般的です。
●認知行動療法
私たちのものの考え方や受け取り方に働きかけて、気持ちを楽にしたり、行動をコントロールしたりする治療方法です。「なぜ、人前に出ると恥ずかしく不安になるのか」というメカニズムを理解し、周囲の人の目や自分の能力を再認識し、不安が発生していた状況の認知を改めます。また呼吸法やリラックス法、上手な話し方等、不安状況への対処法などの理解も進めていきます。それらによって気持ちに余裕が出てきた時に、不安が生まれる状況にあえて飛び込んで、刺激に身を曝す「曝露療法」などの行動療法を取り入れていきながら、苦手意識をゆっくり克服し、日常の緊張や不安の緩和を図ります。
●森田療法
森田療法の特徴は、神経症の不安や恐怖を排除するのではなく「受け入れること」で「とらわれ」から脱出するという点、また、自分の中にある健康な力や自然治癒力を最大限に生かしていくという点にあります。恐怖や不安はより良く生きようとする欲望と表裏一体のものであり、人間誰もが持っている自然な感情です。しかし、不安や恐怖を「あってはいけないもの」として「排除しよう」とするあまり、かえってそれにとらわれるという悪循環に陥ってしまうのです。 森田療法では、不安を「あるがまま」に受け入れながら、より良く生きようとする欲望を建設的な行動という形で発揮し、自分らしい生き方を実現することを目指す治療法です。
私達は、何か嫌なことが起きた時に「悪いことが起きた」と決めつけたくなりますが、ある出来事が良かったか悪かったかは、その後の展開でずいぶん違ってきます。良くなかったと思ったことが、最終的には良い結果に終わるということは、私たちの生活の中ではよくあります。逆に良いと思ったことが、あとで悪い結果になることもよくあります。そのため、起こった出来事に対してその場ですぐ「良い」「悪い」と判断するのではなく、少し冷静になって「今自分が悪いと感じたことは現実に心配したり、怖がるべき問題なのか、もしそうだとすればどのように解決していけばいいのか」など、自分なりの考えを導き出し、ひとつひとつ確認していくことも治療上重要になってきます。
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